けんぼうは留年生

ノンジャンルで何か書きたくなった時に書く感じ

大きな衛星を空に浮かべる話

※この記事は適当で出来ています。科学的に不正確です。「要出典」と一々書くのが面倒なので各自補完してください。

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別世界感を出す定番として、空に月と異なる衛星を浮かべるという演出がある。特にものすごく大きな衛星が浮かんでいるとめちゃくちゃインパクトがあるし、すぐに「地球ではない」ということが伝わる。(まぁ地球の風景でも月を誇張して大きく描くことは出来るが。)

ところで、本当に軽々しく月より巨大な衛星など出して大丈夫だろうか。太陽系の中でも月はかなり大きい部類に入る。特に主星となる地球とのサイズ比で言うと月はめちゃくちゃデカいしめちゃくちゃ近い。それより大きな衛星というのは本当に安定して存在し得るものだろうか?

地球のような惑星からの眺めで考える

 まず、どこか条件を固定しないと計算を始めにくいので、主星は地球と同じサイズで想定する。宇宙を探検して辿り着いた荒野の惑星から眺めた景色ではなくて、地球と同じ様に生態系が発展している異世界の別惑星の気持ちを考えてやっていこう。

衛星の物理的サイズは月より大きくしない

 先述の通り月は地球に比して既にかなりデカい。衛星はデカすぎると惑星の方も回ってしまうわけで、そうなると気温が安定しなくなりそうだ。なので、衛星は月より大きくしない前提で考える。
 見かけさえ大きければ良いのでものすごく軽い素材で衛星を作るというのも考えられそうなものだが、そうするとその衛星は惑星とは大きく異る組成ということなので、外部からやってきた衛星が奇跡的にいい感じに惑星の周りを回り始めたということになる。まぁ地球に生命が誕生するのも奇跡みたいなもんだしそのくらいの奇跡いいだろとも思わなくもないが、外部からそんな衛星がやってくるということはその星には他にも隕石がガンガン降り注ぐことになる。そんな危険な惑星には住めないだろうということでやはり月と似たような比重で、質量は単純に体積に比例すると仮定する。

月を近づけてみる

 衛星がデカいと困るという話をしたが、そもそも今は見た目の話をしているので、単純に近くにあれば大きく見える。距離が半分になれば見た目は倍になる。ただ、近づいてくるとその分月からの引力も大きくなる。引力は距離の2乗に反比例するので、距離半分なら4倍になる。つまるところ潮の満ち引きとかが4倍される。
 それはヤバいので月を4分の1まで軽くしよう。幸い体積は半径の3乗に比例するので質量0.25倍なら半径は0.63倍*1くらいでいい。これで月からの引力を一定に保ちつつ、大きさを1.26倍大きく出来たことになる。x倍大きくするには距離をx^3分の1まで近付けて、大きさをx^2分の1に縮めれば良い。しかしこの方針には2つの限界がある。

ロシュ限界

 まず、距離の限界がある。2つの星の間には「潮汐力」という力が働く。読んで字のごとく潮の満ち引きを発生させるやつだが、これは当然月側にも働いている。月の表側と裏側では、当然表側の方が地球から受ける引力が強く、先述の通り引力は距離の2乗に反比例するので、近いほど力の差が大きくなって星が引きちぎられてしまう。イメージで言うと遠心力と重力の引っ張り合いで星が千切れてしまうようなものだ*2。そしてこの星が千切れない限界の目安がロシュ限界というものだ。地球の場合地球の半径の3倍≒19,000kmくらいがロシュ限界になるらしい。

大きさの限界

 別に衛星自体はいくら小さくても成り立つ。問題はあんまり小さいと丸くならないってことだ。いい感じの景色を作るには丸くあってほしい。例えば火星の衛星フォボスダイモスはどちらも球形ではなく歪んだ形をしている。小惑星帯小惑星も多くが歪んだ形のイメージだろう。で、こればっかりは計算式が全くイメージつかなかったので、実データの羅列を頼った。
太陽系の衛星の一覧 - Wikipedia
 この一覧を半径順に並び替えると大体 500 km 割り込んだところから怪しくなってきて、100 km 割り込むと完全に形が崩れているように見える。気分で200kmくらいを下限としよう。

限界を目指す

 さぁやっていこう。実際の月の半径は1700kmくらい、公転半径は384,000kmくらいだそうだ。上の限界を基準にするとサイズは8.5分の1くらいまで、公転半径は20分の1くらいまで縮められる。8.5の平方根は2.9で20の3乗根は2.7なので、ロシュ限界の方が近そう。というわけで、距離を20分の1まで縮めて、半径は7.4分の1くらいにして引力の釣り合いを取ると、月は2.7倍のサイズになった。

結論

 月は2.7倍までデカく出来る。

*1:0.63^3≒0.25

*2:潮汐力は別に公転してなくても働く力なので間違ってるんだけど気にしないで